Evidence of Wood Intelligence

— 木が語る科学、静けさの根拠 —

Based on Japanese Research and Craftsmanship — 日本の研究と手仕事に基づく —

1. 木の呼吸を、数値で聴く

木は呼吸している。
その呼吸は、風や雨、光の記憶を纏いながら、今もゆっくりと空気をめぐらせている。

ホオノキ(朴の木)は、日本の山々に生まれ、刀の白鞘に選ばれてきた木。
その理由は、「静けさ」にあります。

含水率が 6〜8% のとき、ホオノキ材は最も落ち着き、寸法が安定する。
この領域は、木材科学の実験でも確かめられています。

出典:村田幸司ほか(2025)
“Application of KWW Function and Cole–Cole Plot on Stress Relaxation Process of Magnolia obovata Wood,”
Journal of the Society of Materials Science Japan, 74(1), 62–67.

科学が語る数値の向こうに、木の「息づかい」が見えてくる。
それは、工房で耳を澄ませる静寂と、同じリズムで脈打っています。

2. 手と計測器のあいだで

職人の指先は、長い年月をかけて木の声を覚える。
水分の重み、刃の当たり、手のひらの温度。
しかし、感覚だけでは届かない領域を知るために、私たちは高周波式水分計で、木の「現在の呼吸」を測ります。

数値は、感覚の鏡。
科学は、手の延長。

木が静かに落ち着いていく時間を、目で確かめることで、より深く“聴く”ことができる。

3. 木が人に与える静けさ — 日本の研究から

人が木のそばにいるとき、心拍はゆるみ、呼吸は深くなる。
日本の研究者たちも、この「木の静けさ」を科学的に確かめようとする研究が積み重ねられています。

「木材のにおいを嗅いだり、触ったりすると、人にはどのような影響があるのでしょうか?
木材に対する人間の生理的反応を測定した結果、
木材は金属やプラスチックよりも人の身体に“やさしい”素材であることがわかりました。」
— 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
『木材の香りや手触りの良さを科学的に解明する』(成果選集 第3期, pp. 30–31)

「木材は古くから、人に“癒やし(心地よさ)”をもたらすことが経験的に知られています。
ヒノキ精油を90秒間嗅ぐ実験では、脳の活動を示すヘモグロビン濃度が下がり、
心が落ち着くことが確認されました。」
— 森林・林業学習館『木の癒し効果』

「血圧や脈拍、脳を流れる血液などの動態から、
木材が嗅覚を通じて人をリラックスさせることが確認されています。
木の触感や視覚的印象が、快適性の向上に寄与することも報告されています。」
— 日本木材加工技術協会
『人間の快適性に及ぼす木材の触覚、視覚及び嗅覚刺激の効果』

これらの国内研究は、木が「五感を通して人を穏やかにする素材」であることを示しています。
香り、手触り、光──それぞれが、人の身体のリズムを静かに呼吸へと戻していく。

YOHAKU WOODは、その“科学的に裏付けられた静けさ”を素材の中に見つけ、かたちとして置いています。

4. 木の時間を、可視化する

工房では、木の呼吸を記録するために温度・湿度・含水率を定期的に測定しています。

木口のひび割れが止まり、刃物の音が変わる瞬間。
そのとき、数値もまた安定していく。

平衡含水率の平均:7.2%(温度20℃/湿度55%環境下)
乾燥期間:自然乾燥3年以上+調湿2週間

この数値は、
「木が人の環境で最も静かに呼吸できる領域」であることを示しています。

科学は、木の詩を翻訳するもう一つの言葉。
そして、詩は、科学をやわらかく照らす光。

5. 感性と科学の橋をかける

私たちは、AIをもう一つの観察者として迎え、木目のゆらぎや湿度のリズムを解析しています。

人の手が「経験」で見るなら、AIの眼は「初めて」で見る。
その純粋さが、木の内なる秩序を静かに可視化してくれる。

YOHAKUの仕事は、感性と科学のあいだに橋をかけること。
それは、木が人と共に呼吸を続けるための“証明としての美”を追う旅でもあります。

🔗 出典・参考文献一覧

  • 村田幸司ほか(2025)『Application of KWW Function and Cole–Cole Plot on Stress Relaxation Process of Magnolia obovata Wood』Journal of the Society of Materials Science Japan, 74(1): 62–67.
  • 国立研究開発法人 森林総合研究所(FFPRI, 2023)『木材の香りや手触りの良さを科学的に解明する』成果選集 第3期 pp. 30–31.
  • 森林・林業学習館『木の癒し効果』(林野庁関連教育サイト).
  • 日本木材加工技術協会(JWDA, 2024)『人間の快適性に及ぼす木材の触覚、視覚及び嗅覚刺激の効果』.
  • 北海道立総合研究機構(HRO, 2022)「道産木材データベース」ホオノキ項目.
  • 森林総合研究所(FFPRI, 2024)「ホオノキ材特性と乾燥データ」報告書.